トリクルトリル音声作品「おしえごカノジョ」発売中
雑記

2023年のまとめ

2023年も残りわずかとなりました。いつものように今年のまとめを書き留めていきたいと思います。

ひとつめ。

自サークル、トリクルトリルの「おしえごカノジョ」

出たの1月ですが、去年のまとめにいっぱい書いたので、今年は割愛。

ふたつめ。

CINNAMON☆FACTRYさまの「甘々お姉さんに飼われたい?~イチャラブ×純愛×拘束×射精管理♪~ 」

お仕事でご一緒させていただいたこともある声優・八ッ橋しなもんさんが企画された音声作品のシナリオを担当させていただきました。
タイトル通り、お姉さんにペットとして飼われちゃうという内容のこちら、八ッ橋さんから熱意をもって「こういう作品を作りたい」というお話を頂き、その具現化のお手伝いをさせていただきました。
お姉ちゃんに飼われたい人もそうでない人も、まずは試聴から。

みっつめ。

ensembleさまの「乙女の剣と秘めごとコンチェルト」(略称「乙秘」)

ensembleといえば乙女シリーズ。乙女シリーズといえば女装主人公。
――という書き出しは去年の「乙女とふれあう、ひとつ屋根の下」(略称「乙下」)でもやりましたが、今作も「乙女シリーズ」ということで、主人公が女装をして女学園に潜入する作品です。
2年連続で乙女シリーズ作品=女装主人公モノを単独ライターにて担当するというのは、色々大変なことも多かったわけですが、その分思い入れもたっぷりで「こちら水瀬拓未の代表作でございます!」と胸を張れる作品が、またひとつ増えることとなりました。

で、今年のまとめ雑記ですが、メーカー様に「乙秘の制作秘話的なことをブログに書いてもよいですか?」と問い合わせたら許可いただけたので、例年よりもちょっと踏み込んで書いていきたいと思います。

※以下、ほんのちょっとネタバレっぽい話もあるから気にする人は読まない方がよいかもしれない!(とはいえ公式サイトや体験版で見られる情報の範囲内に可能な限り留めています)※

乙下 と 乙秘

2022年発売の乙下と、2023年発売の乙秘は、どちらも水瀬がシナリオをすべて担当しました。
ゲーム本編はもちろん、公式サイトの紹介文やカウントダウンボイスなどの音声コンテンツの台本、さらに乙秘の場合は特典ミニゲームも担当しています。
乙下と乙秘、どちらも水瀬からすると「乙女シリーズの単独シナリオ作品」なわけですが、関わっているときの心境というか、接しているときの気持ちというのは、結構違っていたのです。

乙下は「乙女シリーズに参加してきた経験と、ずっと自分が作りたいと考えていた企画を融合させ、新たな女装主人公作品を作りたい」というのが出発点でした。
「主人公が学生ではなく社会人(小説家)」であったり「女学園潜入ではなく、女子寮の寮母になる」といった展開なのも、そのあたりが関係しています。
もともと水瀬は百合作品が好きで、創作活動を本格的に始めたときからずっと百合作品を書いていました。上記の『作りたいと考えていた企画』も、原案は百合作品です。
そんな水瀬が、幾度も乙女シリーズに参加し、魅力的な主人公たちと接していくうちに「女装主人公作品でしか描けないものがある」「もっと女装主人公作品を書きたい」という想いが強くなった結果、誕生したのが乙下というわけです。

対して乙秘は「乙女シリーズに参加してきた経験を活かす」という部分は同じですが「まったく新しい作品を作る」というよりも「これまでの乙女シリーズが積み上げてきたものを大切にして、その先へ進む」という意識で向き合った作品になります。
これに関して、顕著だったのが過去作との繋がり。
そもそも乙女シリーズ自体、世界観が繋がっているわけですが、乙秘に関しては、とくに「乙女が奏でる恋のアリア」と明確な関連性をもっています。
他にも「乙女が彩る恋のエッセンス」の「職員としても働く」という点や「乙女が結ぶ月夜の煌めき」の「学園内にふたつのグループがある」という点など(乙秘の場合は学科なので、厳密には少し違いますが)
これまでの乙女シリーズ――とくに、水瀬がライターとして参加した作品群のエッセンスを受け継いだ作品になればと、試行錯誤しながら組み上げていったのが乙秘です。
ちなみに初期段階では、いまよりもさらに乙奏とリンクしているお話でした。

キャラの裏話など

空木日向くんこと卯花陽菜ちゃんこと空木日向くん

剣を振るのが好きだったり、小さい頃にごっこ遊びに興じていたり、すぐおっぱいに反応しちゃったり、自分の中ではすごく男の子してる主人公です。
もちろん「可愛いなぁ」と思うことも多いですが、それはあくまでも「男の子としての可愛さ、恥じらい」であるように描くようにしていて、例のオナニーシーンとかも「我慢できないよねしょうがないよね」的な気持ちで見守っていたり。
発売前、公式サイトでオナニーシーンのCGが発表されたときにX(当時Twitter)にも投稿しましたが、あのイベント絵を初めて見たときは、こちらも抜かねば無作法状態でした。書いて良かったオナニー。
ちなみに日向くん状態で髪が長い姿を見て「これ女装する必要ある?」って思う人もいるかもしれませんが、個人的には日向くんはあのビジュアルあっての日向くんで、ピンク髪女装と黒髪男子で二度美味しい。

こしあん号出発ー! な、小柴杏奈っち

この子はほんとに迷いがなく、キャラ自体も、お話も、描きたいものがハッキリしてました。「今も昔もお隣さん」というキャッチコピーも、かなり初期の段階で決めていた気がします。
女装主人公作品で、自分ならどんな幼馴染みヒロインを描くか――そのアンサーみたいな子かもしれません。
特典ミニゲームで乙奏の綾香さんとうちのほうが凄いんですけど合戦しちゃうの好き。負けず嫌いヨシ!
ちなみに乙秘、主人公と同学年のヒロインが杏奈しかいません。杏奈2年、依夜3年、クレール3年、梨理1年という布陣。今にして思えば珍しいバランスな気もしますが、今作は年齢のバランスを考えてキャラの設定を決めていったのではなく、描きたいキャラを決めたらこのバランスになっていた、という感じです。
余談ですが、乙下のヒロイン3人は、最初にバランスありきで、まず学年から決めています。

漆黒クールビューティー、天海依夜様

おそらく、もっとも右往左往したキャラです(水瀬が)
上級生、強い、物静か、黒髪――といった要素は固まっていましたが、それ以外(とくに女装バレ部分)で、あーでもないこーでもないと試行錯誤していた記憶があります。
一口に「物静か」と言っても、ただ無口なだけとか、喋るのが億劫だとか、感情の起伏が乏しいとか、様々な種類がありますが、依夜は優しいから(普段は)口数が少ない子です。
饒舌になることもある、という部分を早めに見せたくて、宗千佳と一緒にいるシーンが序盤にあります。
ビジュアル面で、折り鶴髪飾りがすっげー好きだということを何度も言っている気がしますがここでも言う。可愛い。本作メガネをかけたいキャラナンバー1。

弾ける母性の香り、クレール・メルル!

その昔、MOONSTONECherryというメーカー(ブランド)様にて伊東ライフ先生とご一緒していたとき「水瀬さんは母性キャラを任せれば間違いない(意訳)」というありがたい言葉をいただき、以後、お姉さんと授乳手コキがメインウェポンな私にとっては、得意料理フルコースみたいなキャラ――かと思いきや、これはこれで結構苦労もあったキャラです。
クレール自身、大人の魅力と余裕で主人公を圧倒するタイプではなく、拗ねたら頬をぷくーっと膨らませる子供っぽい部分もあるタイプで、茶目っ気多めなお姉さんです。そういうところも可愛い。
乙彩の皐月様と最強お姉ちゃん決定戦を繰り広げ、直人と日向が干からびるところが見てみたい(個人の希望です)

メスガキだと思った? 椋木梨理ちゃんでした!

これまで水瀬が関わった乙女シリーズ作品の後輩・年下キャラは「可愛い小動物系」が多かったので(乙奏のことりや、乙月のこころなど)違ったタイプを、ということで生まれた子。
ただ、骨子というか遺伝子みたいなものは、乙彩の芹香に似ていると個人的には思っています。芯が強く目指すべき物がハッキリしている部分とか、姉がいて影響を受けている部分とか。
ちなみに、初期の梨理は今よりもツンツンで生意気でした。「これではただ生意気なだけで可愛くない」と思い、実際に書きながら調整を繰り返し、今の梨理に落ち着いた感じです。
ストイックな一面と、生意気な可愛さがうまいこと共存できたかな、と思います。
ヒロインの中では、とくに依夜と梨理の二人が、言葉の選び方やニュアンスに気を配っています。

美味しいところ持ってくウーマン、椋木美実だよー

「初期の梨理はツンツンで生意気だった」と前述しましたが、姉の美実はというと、全キャラ中もっとも原型と完成形がかけ離れており、初期段階の美実は、かなり王子様系なキャラでした。
一番古い資料を見返したら作った本人がビビったぐらいには王子様で「どうしたんだい? 子猫ちゃん」とか「フッ、負けないよ」なんて言って、薔薇でも持ち歩いていそうな、そういうキャラでした。
今の美実が「ムードメーカー的理解者」だとするなら、最初期の美実は「唯我独尊のトラブルメーカー」みたいな感じで、まさに真逆。もしあのままだったら絶対に苦労してたと思います。
いまの美実様になってくれて本当によかった。

こんなこともあろうかと女史、ニナ・クリオーネ

乙秘という作品はこの人がいないと成立しない、というぐらい、色々なものに関わっている凄い人。
学園長、理事長、ARシステム作った人、エロスーツの考案者(実際にはちょっと違う)などなど、いろんな肩書きをもっていて、実際多才な人です。カウントダウンボイスでは同人誌まで作ってました。
そんな、色々な肩書きに隠れてしまいがちですが、彼女はアリアンロッド女学院の元歌姫でもあり、これはあるルートで利いてきます。実は重要な役どころも担っているわけです、ニナだけに。
はっきりと明言はしていませんが、乙下の諒香と摩冬のように、ニナと宗千佳はほぼほぼ事実婚というか、二人はこのままずっと一緒にいるんだろうな、と水瀬は思ってます。お幸せに。

万象無心流の使い手、諏訪宗千佳

「万象無心流」とは宗千佳が修めている流派の名前です。が、ゲーム本編には一切出てきません。
ゲームを作る時、キャラクターには設定資料というものが用意されます。そこには身長やスリーサイズといった見た目の情報=キャラクターの容姿造形に関わるものから、好きな食べ物や趣味といった、本編に登場しない可能性のある項目もあります(※設定資料の内容や範囲、項目などは、それを制作するメーカーやライターによって、都度異なると思います)
宗千佳は「本編に登場しなかった設定が一番多かった」キャラだと思います。流派だけでなく具体的な戦闘方法なども決めていましたが、本編内では出番がありませんでした。
ちなみに宗千佳の実力は依夜と日向が二人掛かりで挑んで、ようやく勝負になるかも、という感じ。ただ、彼女の実力はカデンツァでは100%発揮されません。なぜなら彼女は本来、二刀流だから。

シークレット多すぎ歌姫、宮守睦月

公式サイトのキャラ紹介を見て「もしかして…?」と思った人は多かったと思いますし、そう思ってもらえるような紹介文を用意しました。理由は「もしかして…?」と思って欲しかったからです。構文かな?
乙秘という作品の根幹に関わるキーパーソンであり、企画当初から「主人公の初恋の相手」という役割が決まっていた子です。
企画を詰めていく(話を組んでいく)段階で、主人公やヒロインの設定が変更されることはそれなりにある話で、前述の美実などはまさにその代表格なんですが、睦月に関しては、初案から完成まで、ほぼ変更はありませんでした。最初の時点で完成していて、それがブレることはなかった、ということです。
つまり「睦月のあの秘めごとは、最初から決まっていた」ということになります。
ゲーム終盤での陽菜と睦月のやりとりとか、書いていてめちゃくちゃ楽しかったです。(なんて書くと、じゃあ他のシーンは書いていて楽しくなかったんだ、なんて深読みする人も出てきそうなので念のため書いておくと、どのヒロインもどのシーンも全部楽しいに決まっているから安心してください)

最後に

フィエルテ(あのエッチなインナー)を提案したのは水瀬です。わかりやすいエッチな格好をしてほしかったし、それを着て恥ずかしがる主人公を見たかったので。
とはいえ、こういったことは「提案したから即OK!」なんてことは当然なく、ディレクターのゴーサインがあればこそ実現します。睦月のアレやコレも、ディレクターのゴーサインがあればこそ。
乙秘に挑む心境として「これまでの乙女シリーズが積み上げてきたものを大切にして、その先へ進む」と書きましたが『乙女シリーズらしからぬ大胆でエッチなフィエルテのビジュアル』や『睦月の秘めごと』などは、積み上げてきたものがあればこそ、挑戦することが出来た部分だと思います。
制作や宣伝に関わった全ての方、遊んでくれた全てのユーザーさん、ありがとうございました。

そのほか

今年発売の作品ではありませんが、先日SMEE様より、
「ラブピカル・ポッピー」
というタイトルが発表されました。

15周年記念時企画&SMEE累計15万本突破記念作品、ということで、わちゃわちゃわー! っとしたハイテンションエンドレスジェットコースター作品になっています。
こちら、シナリオライターとして参加しましたので、よろしくお願いいたします。
これ以外にも、お知らせを届けられるよう、来年も出来る限り頑張っていきたい所存です。

写真は乙秘いっぱい買ったやつです。去年の乙下の記録を塗り替えることは出来ませんでしたが、塗り変えていたらお財布が爆発炎上間違いなしでした。フルプライスだもの。
今年後悔したことのひとつは、ロイヤルエディションをふたつ買っておけばよかった、です。特典のバッチを気兼ねなく使うためにも予備があれば安心だなと思った次第。

メインビジュアル見るたびに梨理のお尻むっちゃエロいなって思います。アン・ガルド!